ホーム > 活動案内・報告 > 活動報告 > 「未来共生調査法E」の授業報告: コリア国際学園訪問

活動報告

「未来共生調査法E」の授業報告: コリア国際学園訪問

 2014年4月25日(金)、2期履修生の初めてのフィールドワークがありました。「未来共生調査法E」の授業でコリア国際学園(Korea International School; KIS, http://www.kis-korea.org/)を訪問しました。コリア国際学園は1期履修生も未来共生プログラムのカリキュラムである「公共サービス・ラーニング」や「プロジェクト・ラーニング」でたびたびお伺いしており、普段より大変お世話になっている学校です。

[写真1]コリア国際学園に向かう

[写真2]コリア国際学園

授業見学

 フィールドワークでは今年度より導入されたハウス制の班分けに従って小さなグループに分かれて、英語、家庭科、数学、音楽、理科などの授業を参観しました。多くの授業が英語、コリア語、日本語の3つの言語を交えて先生が授業をされていました。授業はどのような様子だったのでしょうか。

[写真3]家庭科の授業

[写真4]できあがったフレンチトースト

 まず、家庭科の授業を見学しました。家庭科の授業ではフレンチトーストの作り方を先生が教えられていました。先生は全て英語で話されています。「フレンチトーストを作るには食パンが必要です。食パンの値段を皆さん知っていますか。非常に安いです」。先生がフレンチトーストがどれほどリーズナブルな料理であるかお話されています。英語で話されているので英語の勉強にもなります。その後、先生は材料の説明をされて、実際にフレンチトーストを作られました。できあがったフレンチトーストの非常に甘い香りが教室中に広がっていました。

 英語の授業は小さなグループに分けられて授業が進められていました。ネイティブ・スピーカーの先生がグループを回って熱心に授業をされていました。学生と教師の距離が非常に近く、学生が積極的に発言していることが印象的でした。

 次に、音楽の授業を参観しました。音楽の授業では「数え歌」という歌を歌っています。「数え歌」とは色々な国の言語の数え方を歌にしたものです。そのため、様々な言語の発音が歌の中に含まれています。コリア国際学園の生徒は普段から歌っているためか、流暢に歌っていましたが、2期履修生は上手く歌うことに少し苦戦気味でした。とはいえ、授業の終わりには先生の指導もあり、みんなできっちりと歌うことができるようになりました。

 数学の授業も多言語を交えながらの授業でした。数学の先生が我々に自己紹介を促されました。コリア国際学園の学生さんも我々、大学院生や教員がどのような人たちなのか興味を持っているようでした。

嚴 敞俊(オム・チャンジュン)副校長先生のお話

 最後に、コリア国際学園の嚴 敞俊(オム・チャンジュン)副校長先生のお話を伺いました。「小さな学校だが夢は大きい」と嚴副校長は話します。コリア国際学園の設立動機の一つに在日の人々だけでなく、ニューカマーの人たちの置かれている状況があったそうです。嚴副校長は続けます。朝鮮半島に根付いたアイデンティティを持っていた在日一世の人々の時代には、民族学校が民族教育で重要な役割を果たしていた。しかし、在日二世・三世の時代には在日の人たちが日本化したり、日本人との結婚による多国籍化が進んできた。さらには、植民地時代に日本に移り住んできた人たちとは異なる移民の背景を持つ、ニューカマーと言われる人たちも増えてきた。

 そのような時代背景の中で、従来型の民族学校のニーズが低下してきてしまった。今では定員割れを起こす民族学校があるほどに従来の民族教育は過渡期を迎えているそうです。また、世界を見れば、グローバル化の波があらゆるところに押し寄せている。そのためか、英語教育を重視し、インターナショナル・スクールに子どもを入れようとする親も多い。とはいえ、多くのインターナショナル・スクールは、特に歴史教育の観点で欧米に偏り過ぎている傾向がある。コリア国際学園では、アジアの歴史を教えて、アジアに立脚してグローバル社会で生きていけるような世界市民を育てたいと考えています。

[写真5]「越境人」の標語

[写真6]お話をされる嚴副校長先生

 コリア国際学園は「越境人」という理念的な人間像を掲げています。嚴副校長はホワイトボードに円を描いて説明されます。朝鮮半島の円と日本の円。コリア国際学園の多くの子どもはどちらにも完全に所属するわけでない。もし日本社会で違和感を持てば祖国志向になる。では、祖国に行けばどうなるか?実は祖国に行っても何か違う感覚を持ってしまう。つまり、完全には祖国の人間になれない。文化的な隔たりをどうしても感じてしまう。そして、自分自身は辺境人であるかのような感覚を持つ。そのような感覚ではなく、むしろ、「越境人」になろう、というのが本学の設立の理念です。「この2つの円を囲むと大きな円になります。そこでは辺境人はもはや辺境ではなく中心になります。グローバル化の時代ではそのような人たちが『越境人』として活躍できると思うのです」。嚴副校長はこのように力強く「越境人」の理念について語られました。「本国の日本人、韓国人、朝鮮人が超えられないような壁を越えていくような人材を育てたいのです」とおっしゃっていました。

2期履修生の報告

[写真7]報告をする2期履修生

[写真8]質問を受ける2期履修生

 後日、2期履修生はハウス制の班ごとに、コリア国際学園の先生方や生徒さんに30分ほどのインタビューをしました。そして、その様子を「未来共生調査法E」の授業の中で報告しました。履修生の感想を特に取り上げます。たとえば、高原耕平さん(文学研究科 博士前期課程1年)は「(自分が中高生の頃にいた)日本の学校とは違い非常に緩い雰囲気を感じた。私語が多く感じるほどだったが、先生はそれを私語としてやめさせるのではなく、それを聞いて受け止めた上で話されていたことには大変驚いた」。西山梨佐さん(国際公共政策研究科 博士前期課程1年)は「先生は意外にもエスニシティについてはほとんど意識していない印象を受けた。それよりもむしろ、教員として良くなりたいという印象を受けた」。履修生はコリア国際学園の学生が他言語を習得できる国際的な環境に強い魅力を感じていることも報告していました。

 また、インタビューという調査法の観点からの気付きもありました。田平修さん(国際公共政策研究科 博士前期課程1年)は「聞き方、相手への伝わり方により、答えが変わってくるようにも思いました。インタビューのスキルを磨くことの重要性を感じました」。最後に志水宏吉先生(プログラム・コーディネーター)がインタビュー調査について解説され、授業が終わりました。昨年度に続き、コリア国際学園の学生さん、教員のみなさまには大変お世話になりました。履修生共々良い学びをさせていただきました。ありがとうございました。

 

 

 
 

(2014年5月19日, 平尾)

« 活動報告 一覧へ戻る