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活動報告

トロント海外研修2017(多文化主義班からのご報告)


 4月26日から5月8日の日程でカナダ・トロント大学を拠点に4期生のフィールド研修が行われました。現地では3班に分かれて活動しましたが、多文化主義班の杉本龍一さん(人間科学研究科博士前期課程2年)からのご報告です。

多文化主義の境界で

[写真1]先住民の伝統的な儀式

[写真2]トロント郊外の自然公園

第1班は、多文化主義をテーマに、主に以下の2つのフィールドワークから考察を行いました。

フィールドワークの1日目は、トロントに住む先住民のお話を伺いました。ガイドしてくださった先住民の方から、古くから伝わる独特の儀式や彼らの自然との関わりについて学びました。彼らの文化の中で、動物、植物、水、色、それぞれに大きな意味があり、決して自然と生活を切り離すことはできません。工業化が進んだトロントで、彼ら先住民の暮らしをどのように持続させることができるでしょうか。また、カナダ政府が打ち出す多文化主義の文脈の中で、古くからこの土地に住む彼らの置かれた立ち位置は非常に複雑です。目に見える差別だけではなく、貧困率の高さなどの構造的な差別の課題も抱えており、私たちは先住民との共生の課題の大きさというものを改めて認識することができました。
フィールドワークの2日目は、トロント大学でシリアからの難民への支援を行うNMC-CESIの活動を訪問しました。午前中は、代表のラシャさんから活動の概要や参加者にとっての団体の意義について伺いました。その後、トロント大学の中で難民の若者への英語支援のチュートリアルに参加しました。トロントの自然や文化について書かれた英語の文章をネイティブスピーカーと一緒に読みながら、分からない部分を確認していきます。何気ない日常会話やホームタウンの思い出なども挟み込まれ、和やかな空気の中で活動に取り組んでいました。

私たちはこれらのフィールドワークを踏まえ、先住民およびシリアからの難民がカナダ社会のどこに位置付いているのか、議論を重ねました。カナダ政府は1971年より、多文化主義を国是として掲げており、当然、その多文化主義社会の中に先住民を位置付けています。しかし、私たちをガイドしてくださった先住民は、長い年月をかけて自然と共に生きてきた自分たちの文化に誇りを持っており、自身を「カナダ国民」の一員であるとは捉えていません。その一方で、私たちが訪れたシリアの難民支援の現場からは、「カナダは私にとっての第二のホームだ」といったシリア出身の若者の声も聞こえてきました。私たちは、ガイドしてくださった先住民は「多文化主義の中に入れられた存在」であり、カナダを「第二のホーム」と語るシリアからの難民は「多文化主義に入ろうとしている存在」と言えるのではないかと考えました。つまり何れも、カナダの多文化主義の境界に置かれた存在だと言うことができます。私たちは彼ら彼女らの声に耳を傾けることで、多文化主義という一定の成果を上げたという点では理想的ともいえる共生社会の、可能性と限界を垣間見ることができました。それは私たちがこれからも日本で共生を考えていく上で、大きなヒントとなることでしょう。

 

(2017年5月29日, 杉本, 松本, 王文潔, 山口)

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