ホーム > 活動案内・報告 > 活動報告 > トロント海外研修2018のご報告(KISSグループ)

活動報告

トロント海外研修2018のご報告(KISSグループ)


 4月25日から5月7日の日程でカナダ・トロント大学を拠点に5期生を中心としたフィールド研修が行われました。現地での活動について、聶蕙菁さん(人間科学研究科博士前期課程2年)からのご報告です。

KISSグループからの報告

[写真1]ケンジントンマーケット

 KISSグループは、ケンジントンマーケットでフィールドワークを行った。ケンジントンマーケットはトロント大学から徒歩30分ほどの場所に位置し、移民が多く入り込んできたその歴史から、いわば多文化主義のシンボルとして知られている。我々はケンジントンマーケットでいくつかのエスニックショップを観察し、店員さんと会話をしたり、買い物と食事を楽しみながらマーケットの雰囲気を感じていた。確かに様々な人が街を行き交い、そこで食事や買い物をしていたし、多様な文化も混じりあっていたが、その中でも若者と高所得者層が特に多いことに私たちはフィールドワークを通して気がついた。

 これらの観察結果を大阪のコリアタウンと比較し、共生について考えをめぐらせ、以下の3つの仮説を立てた。

 結果の一つ目は私たち自身に関することである。多様性を考える時、私たちは、見た目と言語の違いにしか目を向けていないことに気がついた。「多様性」を考えるとき、私たちは、見た目と言語を「多様性」と想定していたのではないかということである。なぜそう思ったかというと、振り返ってみれば、私たちが選択した調査対象は全部エスニックショップであった。さらに、私たちが無意識のうちに”Where are you from ?”という質問を通して多様性を見つめようとしていたこと、また白人ではない人や英語を喋らない人の出身を勝手に決めつけたりしていたこともその根拠になる。私たちの中に「カナダ人は、白人で英語を喋る」というステレオタイプが存在すると感じた。しかし、トロント研修の中で訪問していたGhanaian Churchに通う人々など、宗教や肌の色が異なる人もみな等しくカナダ人である。本当の「多様性」は見た目と言語だけではなく、健康、教育、信仰、セクシュアリティなど様々な側面も考慮に入れないといけないことがわかってきた。

[写真2]南米系ショップの写真

 結論の二つ目は、無意識な排除についてである。今回比較を通して分かったことは、包摂を進めようとする意識を持って何かに取り組んでいても、無意識に誰かを排除してしまうことがあるということである。例えば、ケンジントンマーケットの場合、最初に「ペデストリアンサンデーズ」は、対面コミュニケーションを推奨し、ケンジントンマーケットのジェントリフィケーションを抑止しようとしていたにもかかわらず、結果的には、所得が低い人と年配の人が排除されることになってしまった。一方でコリアンタウンに目を向けると、ケンジントンマーケットと同じような現象が起きていたことがわかった。コリアンタウンはかつて在日韓国・朝鮮人にとって食材や日用品などが豊富に揃う、生活に密着した市場であった。その後、2002年日韓共催のワールドカップの開催や「韓流ブーム」の影響を受け、コリアタウンとして有名になった。在日韓国・朝鮮人だけでなく、多様な人々に足を運んでもらいたいと、人気を博していたK-POPを全面に打ち出し、現在ではカフェ、レストラン、ファッションのお店が数多く立ち並ぶ。しかしながら、多様な人々を招き入れるはずの取り組みが、K-POPやカフェ、ファションに馴染みのない男性や高齢者を排除することになってしまった。共生社会を作るために、包摂しようと思っていても、無意識的な排除を引き起こす可能性も常に頭に入れないといけないことを私たちは認識した。

 最後に私たちは、ケンジントンマーケットにはエスニックな多様性はあるものの、年齢と経済による多様性が欠けていること、コリアタウンでは年齢とジェンダーによる多様性が欠けていると感じた。私たちは、ケンジントンマーケットでのフィールドワークを始める当初、「ジェントリフィケーションが、多様性の一側面を悪化させてしまうかもしれない」という仮説を立てていたが、自分たちのものさしでその多様性を測っていたことに気づかされた。多様性の重要性を考える時、人によって大事にしているものが違うので、人の中で多様性のヒエラルキーが存在するではないかと思った。多様性をどう測るかは慎重な議論が必要だが、そもそも多様性は測ることができるものなのかという疑問も残っている。

 

(2018年7月25日, 聶)

« 活動報告 一覧へ戻る