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活動報告

トロント海外研修2016(トランスナショナリズム・移民・宗教班からのご報告)

 4月28日から5月10日の日程でカナダ・トロント大学を拠点に3期生のフィールド研修が行われました。現地では4班に分かれて活動しましたが、Transnationalism, Migration and Religion: Home-making amongst the Diaspora班の伊藤莉央さん(人間科学研究科博士前期課程2年)からのご報告です。

多文化主義社会における宗教と居場所作りとの関係について

[写真1]教会におけるミサの様子

 私たちのグループは、CLUSTER Ⅲ: Transnationalism, Migration and Religion: Home-making amongst the Diasporaについてまとめました。このCLUSTERでは、ディアスポラなつながりの中での国境を超えた「居場所作り(home-making)」と宗教の役割に注目し、トロント大学のGirish Daswani教授の講義を受けました。講義では、「ホームとは何ですか?」という問いから始まり、多文化主義社会における宗教と居場所作りとの関係について考えました。ホームは個人のものでもあれば、公衆のものでもあります。他者にとっての居場所作り(特にマジョリティーがマイノリティーの居場所作り)を認めないとナショナリズム的な衝突が生まれてきます。居場所作りに対して、エスニシティのルーツや宗教を越えた相互扶助の精神が大切であるということを学びました。また、フィールドワークとして、ガーナ人を中心としたペンテコステ教会と地域のコミュニティーに深く関わる聖霊派教会を実際に訪れ、地域における居場所作りとはどのようなことなのか学びました。

 研修5日目、冷たい雨が降る中私たちはバスで訪問先の教会に向かいました。教会に到着し、バスから降りると、なにやら大きな音が教会のなかから聞こえてきます。入り口の扉を開け、教会の中に入ると、そこには色とりどりの民族衣装を着た人、ミサをバンドの音楽に合わせて歌う人、ととてもにぎやかでエスニックな雰囲気が漂っていました。ここは、地域のガーナにつながりがある人々が集う、ペンテコステ教会とよばれる教会です。ソウルミュージックのような、力強い歌声、大きなバックミュージックで、近くの人の話し声が聞こえないほどです。日曜日にガーナにつながりのある人々を中心にこの教会に集い、お祈りをしているのだそうです。

 ミサの途中で、スタッフの方からお話をきく時間がありました(もちろん別室で!)。お話によると、この教会が2階立てで、一階はガーナの言葉でミサが行われ、2階では英語でミサが行われているのだそうです。ガーナで生まれ育ち、ガーナの言葉を話す人、カナダで生まれ育ち、英語を話す人、一口にガーナにつながる人々といっても、それぞれの人は様々な背景をもっているから、というのがその理由だそうです。しかし、この教会にとってもっとも大切なこと、それはここに集う人が「ホームを感じることができる」ということです。例えば、ガーナから親せきなどを頼ってガーナに来たとしても、ガーナに関わりのある人とばかり日常的にいることはできません。そこで、週に1度でもおなじ言語、おなじ文化を有する人たちが時間をともにすることで、カナダの地にいながらも、ガーナを感じることができ、安心感を得ることができるそうです。

 多文化の背景をもつ人々が1つの国で暮らしてくためには、こういった教会のように同じルーツをもつ人々が集える場所づくりが重要になってくるのかもしれない、そう強く感じる訪問となりました。
 

 午後からは、カリスマティックチャーチと呼ばれる教会にフィールドワークに行きました。あいにく、こちらの教会ではミサを見学することができなかったけれど、教会の牧師さんや教会で働いていらっしゃる方たちから、お話を伺うことができました。

 午前中に訪れた教会と大きく違うことは、こちらの教会は地域での多文化共生に力を入れていることでした。教会のある地域において様々な背景を持つ人たちが生きやすい環境をつくるために、教会の職員の方たちは、教会を訪れる人たちだけではなく、教会に来ない地域の人たちへのアプローチや支援を行っているとのことでした。つまり、例えキリスト教ではない宗教を信仰している人たちでも、地域住民であれば積極的にサポートを行っているそうです。この教会のある地域の周辺には、もともとモーテルと呼ばれる比較的安価な住居があり、そこには多くの移民や難民があらたに引っ越して来るとガイドの方から聞きました。このような人たちの支援を行い、地域において多文化共生を実践しているのが、私たちの訪れた教会なのではないかと思います。カナダ政府の掲げるMulticultural Policyを実践している重要なアクターとして教会がひとつの例として挙げられるのではないかと今回のフィールドワークから学びました。教会の方も、教会と政府の間にはパートナーシップのようなものが存在していると仰っており、そのことからも、政府からも教会は、政策を実践する上での重要なパートナーとして認識されているのだろうと感じました。このように、多文化共生は政策とそれを実行する者の両者がそろってはじめて達成されるものであり、どちらかが欠けるとうまく達成されないものだと感じました。

 

(2016年6月11日, 伊藤莉央)

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