ホーム > 活動案内・報告 > 活動報告 > 庄内の街歩き(未来共生調査法A)

活動報告

庄内の街歩き(未来共生調査法A)

[写真1]庄内街歩きの様子

 2016年4月21日(金)、晴天の空の中、4期生の未来共生調査法Aの授業で庄内の街歩きをしました。庄内は人情味溢れる下町風情が残る街並みで知られ、大阪府豊中市にある街です。大阪の都心部・梅田まで電車で10分ほどの便利な場所でもあり、商業が盛んな街もあります。また、長い歴史を持つ大阪音楽大学も庄内にあります。

 訪れる人を引き付ける魅力を持つ庄内ですが、1980年代以降、ドーナツ化の影響もあり、人口減少、少子高齢化という問題に直面している側面もあります。

 今回の街歩きでは、庄内の街を歩き、「豊中市立庄内少年文化館」で豊中市の田中逸郎副市長と大源文造教育委員会教育長からお話を聞かせていただきました。ご報告できればと思います。

  

田中逸郎豊中市副市長のお話

[写真2]お話し下さる田中逸郎副市長

[写真3]豊中市庄内少年文化館内での聞き取り

 副市長は豊中市の公共政策を中心にお話くださいました。まず生活保護費についてです。日本には生活保護というものがあり、働くことができない場合に福祉の観点より生活費を受給することができるという制度があります。また、働くことができる場合には、制度的に最低限もらうことができるお金が定められています。前者を生活保護、後者を最低賃金といいますが、生活保護でもらえるお金が最低賃金としてもらえるお金を上回っていたそうです。働いてもらうお金より働かないでもらうお金のほうが多いのはおかしい。そのため、国は生活保護の支出額を減少し、人々に自分で働いてもらうような政策を採用しました。

 このような「福祉から就労へ」という政策は、生活保護を受けようとしていた人たちに経済的な自立を促しました。しかしながら、生活保護を受けず自立した人たちの7割は「非正規」就業者であり、収入がそれほど多くないワーキングプアの状態にある。副市長は研究論文を引用してお話くださいました。

 自立は大切であり、「福祉から就労へ」という取組みも必要だが、現状は「働いている弱者(ワーキングプア)を利用して、働けない弱者(生活保護受給者)をたたく構造になっていないか」と、副市長は指摘されます。そして、「人は一人では生きていけない。だから、自立・自己責任を強調するだけでは解決しない。相互に支え、助け合える地域社会をいかにつくるかが基礎自治体に問われていると思う」とおっしゃっていました。

 副市長が目指す自治体とはどのようなものでしょうか。副市長は市民参加型の政治についてお話くださいます。市民参加を考えた場合、一部には「『普段働いている人々の仕事が増えるだけ』との意見もあるが、そうではない。市民自らがまちの未来を一緒になって考える、そのために参加できるような仕組みをつくっておくのが行政の仕事である」と指摘されます。市民を上から「統治」するのではなく、市民による「自治」や市民とともに「共治」の考え方こそが今後ますます重要になっていく、とされました。

 ただし、市民参加といっても、それほど簡単なものでもないようです。現在、豊中市において児童の少なくなった小学校を統合しようという議論があります。小学校は地域コミュニティにとって拠点・シンボルになっているのでしょうか。地元の方に説明した時に、かなり厳しい意見をいただくこともあるそうです。副市長は言います。「厳しい意見を頂いたからといって簡単に(自治や共治を)あきらめてしまえば、(統治のような)公私二元論に陥ってしまう。最初はみんな厳しい意見をおっしゃるんです。そうではなく、もう少し我慢強く丁寧にお話する。そうすれば、市民の方々も一緒になって考えてくれ、(公を担う)主体になってもらえる」。副市長は市民参加型の現場で忍耐強くアプローチすることの必要性を説かれているように感じました。

 最後に副市長は豊中における共生社会についてお話下さいました。「共生社会づくりに終着点はない。むしろ、共生を求める姿勢自体、プロセス自体を共生社会と考えたいと思っています」。

教育委員長のお話

[写真4]お話下さる大源文造教育長

 副市長の話のあと、大源教育長の話に移りました。まず、教育長は庄内地域のまちの様子について説明されました。大阪市内に近接し、梅田にも近く、利便性の高い場所で、高度経済成長期は人口も急増し、大変活気のあるまちであった。しかし、近年は、市内の中でも特に高齢化が進むとともに、子どもが減少傾向にあるとのこと。ただ、今も昔も、庄内地域は「下町風情のあるまち、温かいまち」と表現されています。

 教育長は行政職出身で、教育職出身ではないとのことです。そのため、学校のことや子どもたちのことを、もっと身近に感じたいとの思いから、学校訪問を繰り返し、先生方からの聞き取りや、授業やクラブ活動など、子ども達の日常の様子を間近に見てこられました。庄内地域の学校を訪問した際には、子ども達から、親しく声をかけられることもあるようです。庄内地域の子どもたちは人懐っこくて、みんな仲が良い。しかしながら、「寂しい思いをしている子も多い」と話されました。

 教育長は子どもの「しんどさ」と大人の「しんどさ」は重なっていると、言います。庄内地域はある時期より、経済的余裕層が郊外に移り住むなどのドーナツ化現象もあいまって、経済的に厳しい状況にある家庭が多い。また、最近の傾向として、一人親家庭も多いとのこと。しんどい状況にある家庭では、どうしても子どもと十分に関わることが出来ず、その結果、子どもは自分の思いなどを受け止めてもらえず、寂しい思いにいたるケースも多い。このような環境の中で育った子が、自らが親になった時に、同じ子育て感で、子どもと接するといった負の連鎖も見過ごせない課題であると話されました。

 教育長はかつて同和行政に携わっていた時の話で、ある保育所での取り組み事例を紹介されました。「経済的に厳しい状況の中で、親から十分に関わってもらうという経験がなかった人が親になり、いざ自分が子育てという時に、自分が受けてきたことを子どもに返し、その結果、子どもがしんどくなり、大変悩まれたケースがあります。保育所に子どもと一緒に行き、保育者と一緒に子育てについて学ばれたものであり、例えば、子どもの『つぶやき』に耳を傾けるといったこと。子どもは自分の思いや訴えを、ふっと『つぶやき』の中で発信する。それを聞き過ごさず、しっかりと受け止めることで、これまでとは異なる接し方を子どもに出来るようになった。こういったことを通して、負の連鎖を断ち切れるのではないかとも思っています。」

 話は、小・中学校の再編に移りました。教育長は小、中学校におけるクラス替えの意義を説明されました。「クラス替えの時、先生達は大変悩みながら、考えている。」一人ひとりの子ども達の性格や特徴、さらにはクラス集団の有り様などについて、そして、人は人との関わりの中で成長していくことから、子どもの人格的な成長に繋がるように、先生達は考えているようです。すなわち、クラス替え自体にも教育的な目的があると考えて良いのかもしれません。ところが、一学年に一学級しかなかったとすれば、そういうふうなことができず、人間関係の固定化にもつながってしまうと、話されました。

 昨年、学校教育法の一部が改正され、今年の4月から、従来からの小学校、中学校に加え、「義務教育学校」という新たな校種がスタートし、義務教育9年間を見据えた一貫性・系統性のある教育をすすめる条件が、制度的にも整った。10年ほど前から実践されている広島の呉市や東京の品川区などで、特区による成功事例もあったことが制度改正に繋がったそうです。

教育長はそのメリットを話されます。最近の子ども達は心身ともに、成長の早期化がみられる。その意味では、高学年では一人の担任の先生だけではなく、複数の先生が子どもを見るほうが、子どものいろんな側面をみる事が出来、子どもに対して適切な対応が可能となる。また、小学校の4年生ぐらいから、子どもによっては問題行動などが顕著となってくる。小学校の先生はなんとか食い止めようとして6年生まで対応するのだが、中学生になると、連携しながらも限界もあり、上手くいかないケースも多い。小中一貫教育ならば、小中学校の先生達が一体となって、9年間を見通しながら対応も可能となるというメリットがある。

 最後に、教育長は庄内地域が持つ様々な社会資源や魅力にふれるとともに、「子どもたちが直面している問題や課題は、基本的に大人が直面しているものと同じ。未来を担う子ども達を、保護者をはじめ地域の皆さんと一緒に地域ぐるみで育んでいきたい」と話されました。

庄内ガダバ訪問

[写真5]庄内ガダバの前での集合写真

 副市長と教育委員長のお話をお伺いした後、「庄内ガダバ」を訪れました。「庄内ガダバ」とは、未来共生プログラムの履修生が私的・公的、さまざまな形で関わっているコミュニティです。庄内ガダバの机や椅子は全て地元の人たちが使わなくなったものを寄付していただいたものを利用しているそうです。20代から30代の人達がよく集まり、壁塗り大会、映像作成などのイベントを開き、みんなで楽しくコミュニティを作っていることをお伺いしました。

 4期生は今回の街歩きで、昔ながらの町並み、所々にある新しいマンションなど、色々なものを観察していたようです。次回の未来共生調査法Aの授業では、3チームに分かれてインタビューをします。みなさん、頑張ってください。

 

(2016年5月16日, 平尾)

« 活動報告 一覧へ戻る