ホーム > 活動案内・報告 > 活動報告 > 公共サービス・ラーニング:2期履修生からのご報告

活動報告

公共サービス・ラーニング:2期履修生からのご報告


 未来共生プログラムでは1年次の後期に「公共サービス・ラーニング」という授業科目があります。その科目では、履修生が学校、病院、自治体などの現場で実践家の人々とともに実際に様々な活動に従事して、多文化共生社会における実践的な能力を学ぶことを目的としています。2期履修生の公共サービス・ラーニングも無事に終わり、みなさん、いろいろな学びがあったようです。ここでは大阪市立南小学校で活動した田中稜さん(人間科学研究科・博士前期課程1年)、NPO法人ウィズアスで活動した西山梨佐さん(国際公共政策研究科・博士前期課程1年)からの報告をご紹介いたします。受け入れ先でお世話になったみなさま、ありがとうございました。

受け入れ先:大阪市立南小学校
          田中稜[人間科学研究科・博士前期課程1年]

[写真1]在籍児童の多国籍化を物語る多言語表示

[写真2]楽しみながら英語を学ぶ外国語活動

 大阪市立南小学校(以下、南小)は、大阪市中央区心斎橋、御堂筋と堺筋の中間地点付近に位置しています。1987年から1995年にかけて、南小の母体となる旧大宝小学校と、周辺の3つの小学校が統廃合し、現在の南小となりました。そのため、学区は難波や道頓堀近辺を含む、区内の広範囲に及びます。それにもかかわらず、在籍児童数は約190名、各学年1学級編成と、小規模です。南小最大の特色は、在籍児童の約4割が外国になんらかのつながりを持っているということです。その多くが、移住外国人家庭や国際結婚家庭の子どもです。その中には、日本(大阪)で生まれ育った子どももいれば、海外で生まれ育ち最近来日(来阪)した子ども、日本(大阪)と外国を往還する子どももいます。南小では、そのような児童の多様なニーズに応えるため、日本語指導や国際理解教育をはじめとする、特色ある取り組みがなされています。

 私は、2014年10月10日から翌年1月末まで、週1回のペースで南小を訪問し、同校の教育活動に携わらせていただきました。その内容は、日本語教室、通常学級(主に低学年)、外国語活動、放課後の日本語補習授業です。日本語と通常学級の授業では、児童一人ひとりの授業内容の理解度や問題演習の進み具合を見て、補足の説明や指導が必要と筆者が判断した場合、その児童のそばに寄り添い、必要なサポートをしました。英語の授業に関しては、担当教員の授業の補佐を中心に行いました。また、授業終了後から完全下校時刻までの間、学校に残った児童との交流を行い、彼ら・彼女らの生活経験に関する理解を深めました。 

 私が南小の教育活動に継続的に関わる中で、児童ひとりひとりの存在を重視する体制が整っているという印象を受けました。日本語教室や通常学級、放課後の取り組み、学習発表会など、筆者がかかわる教育活動の全てにおいて、その規模や目的の違いにかかわらず、ひとりひとりの存在が認められ、その個性や経験が活かされる工夫がなされていました。その結果、児童一人ひとりの学習意欲の向上や、自尊感情の育成へとつながっているように感じられました。そこには、教員の努力だけでなく、地域住民や学生ボランティアの協力も大きく関係しています。特に、学級・教科担任だけでは対応しきれない、学習上の困難を抱える児童に対する支援は、そのような協力があるからこそ成立しているように思われました。南小では、学校の中に学校外の人々を巻き込むことで、学校内外の社会成員が文化的・社会的属性を超えて協調・協力するという意味での「多文化共生」が実現していると言えます。

受け入れ先:NPO法人ウィズアス
          西山梨佐[国際公共政策研究科・博士前期課程1年]

[写真3]紙すき作業の様子

 公共サービス・ラーニングにおいて、神戸にあるNPO法人ウィズアスの事業部の一つである、障害者就労支援事業所「ウィングコウベ」での活動に関わらせて頂きました。ここでは、高齢の方や障がいのある方など、なんらかの障がいのある人々の自立と社会参加を目指し、ユニバーサルツーリズムをプロデュースする「神戸ユニバーサルツーリズムセンター」としての事業が行われています。また他にも、神戸ユニバーサルライフ情報紙「びと」、無料の車いすの貸し出しネットワークである「KOBEどこでも車いす」、花壇のお手入れ、「紙すき」、「山の幸染め」といった創作活動をする「ハーブクラブ」(しおかぜ食堂)などの事業が行われています。

 私はハーブクラブで一緒に活動させて頂き、また、ユニバーサルツーリズムについてもお話しを伺いました。ハーブクラブでは最初、どのようなことが手伝えるのか、どの範囲で手伝うのか、といった戸惑いもありましたが、活動に参加されていた方は、皆生き生きとした様子で、自分の得意な能力を発揮されていました。山の幸染めでは十人十色の色とりどりな染め物が作られたり、紙すきでは職人技を披露する方もおられ、また、絵が得意な方は、一筆箋やコースターなどの挿絵を書かれていました。職員の方の「障がいのある方達が今できることを『どう社会につなげていくか』ということを考えて行くことが障がい福祉の公共サービスであり、障がいのある人々の傍らにいる私達の役目」、「『できるようにする』というのが必ずしも目標ではなく、本人らしさを豊かに生かしていくことが大事であり、事業所の指導者にも求められる理解」という言葉がとても心に響きました。

[写真4]山の幸染めの作業

 ユニバーサルツーリズムとは、障がいや年齢、性別など誰にとっても障壁の無い旅のプロデュースであり、福祉から観光を捉え、障がいのある当事者だけでなく、その家族や友人をもいっしょに旅・滞在を楽しむことを視野に入れた活動です。その背景には、ハード面の整備だけでは障壁はなくならず、ソフト面(接遇面)を充実させることが大事、という理事長の思いもあります。同じく観光情報紙「びと」は、車いすを利用している職員の方々の目線で、段差や自動ドア、スライドなどのハード面の情報だけでなく、お店の対応についてなど、ソフト面の情報も発信しています。

 その他に障がいがある人へのホスピタリティでハード面での困難を補うことができることや、また、そのことで、もう一度、行きたいか行きたくないかという気持ちに差が出ることなどをお聞きしました。また、「びと」の取材を通して、お店の人とのコミュニケーションがお客と店員という関係を超えたつながりを作り、心のバリアフリーが大事なのだという職員の方のお話を伺い、それまでなにげなくバリアフリーという言葉を耳にし、物理的な障害物を取り除くイメージを持っていた私は、本当にユニバーサルな社会とはどういうものか改めて考えさせられました。

 短い活動期間でしたが、充実した時間を過ごさせて頂くとともに、今まではほとんど知らなかった障がいのある方達とその周りの方々の気持ちや考え、障がい者福祉の考えを学ぶ貴重な体験をさせて頂きました。

受け入れ先(順不同)

豊中市立野畑小学校、大阪市立南小学校、茨木市立郡山小学校、大阪市立長池小学校、北大阪朝鮮初中級学校、コリア国際学園、大阪府立西成高校、大阪府立門真なみはや高等学校、ヒューライツ大阪、大阪市男女いきいき財団、とよなか男女共同参画推進センター、NPO法人 多言語センターFACIL・ワールド・キッズ・コミュニティ、NPO法人 プラス・アーツ、フェアトレード雑貨 エスペーロ、豊中市社会福祉協議会、大阪市港区役所 恊働まちづくり支援課、大阪人権博物館 リバティおおさか、NPO法人 ウィズアス、NPO法人ラブとよネット、とよなか国際交流協会、関西沖縄文庫、日本災害支援ボランティアネットワーク、MASHOSAKA dista、枚方市保健センター、豊川いのち・愛・夢センター、NPO法人こえとことばとこころの部屋COCOROOM

 

(2015年3月20日, 田中、西山)

« 活動報告 一覧へ戻る