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活動報告

プロジェクト・ラーニング(「のいるプロジェクト」班の報告)

[のいるプロジェクト]ワークショップ 多文化な暮らしを語る会

 「のいるプロジェクト」班(1期履修生: 大瀧、数実、康、趙、村上)は、2014年2月のハワイ研修での活動を踏まえ、p4c(philosophy for children)を用いてセーフプレイスを創出していくプロジェクトを企画しました。p4cとは、ハワイ大学のトーマス・ジャクソンが中心になって作り上げた対話の方法です。参加者全員が輪になって座り、毛糸で作ったコミュニティボールを使って対話を行います。


当日のチラシ
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 このプロジェクトの目的は、「多文化共生のために必要となるセーフプレイスの創出」です。同化主義(A+B→A)でもなく統合主義(A+B→A+B)でもない、共生モデル(A+B→A’+B’+α)を実現する実践のひとつとして「対話」が注目されています。異なる文化的背景を持つAとBが、対話がなされる場で出会い、それぞれの想いを語り、耳を傾け、考えることによって両者が変化し(A→A’,B→B’)、対話を通じた相互作用によって新しい価値(α)が生み出されることが期待されます。そこで本プロジェクトでは、ハワイ研修で学んだp4cという対話法で、その土台となるセーフプレイスを創出することにしました。身体的にも、知的にも、感情的にも様々な意味で<セーフ>な場において、はじめて他者への寛容と関心が可能になると考えるからです。

 活動の場となったのは、公共サービス・ラーニングなどで昨年からお世話になっているコリア国際学園(以降、KIS)と、大阪大学です。前者においては、現代の様々な問題と関わる「民族」や「エスニシティ」などについて、自分の経験と照らし合わせ、互いに話し合い、探求していく場が必要と捉えていました。後者においては、日本人学生を含めて異なるエスニシティの学生同士が、アカデミックな場などでの上辺だけの会話ではなく、思っていることを素直に話し合える場所が必要であると考えていました。これを踏まえ、二つの場で、セーフプレイスの創出を目指すp4cを実施することになりました。

[写真1]2014年6月28日、大阪大学豊中キャンパスオレンジショップでの、第二回合同セッションp4cの様子。KISの生徒の話をみんなで聞いているのがわかる。

 実際のプロジェクトでは、4月から6月までに計8回のp4cを実施しました。まず、KISでは、先生方のご厚意により授業の枠をいただき、そこでp4c型の授業を行いました。選択科目であったこの授業には、中学1年生から高校3年生までの計9名が参加してくれました。対話を通じて、「いのちより大切なものはあるか」「自分にとって理解できない者はなにか、なぜ理解できないのか」などの問いをわたしたちも含め、みんなで考え、対話を行いました。対話のなかで、高校3年生と中学1年生が互いに問いかけあい、考える光景は、少なくともわたしにとってセーフにみえました。

 次に、阪大では、ワークショップという形で、p4cを実施しました。KISとの大きな違いは、まず参加者を集めなければならないという点でした。チラシを作成し、発送したり、知人などに直接呼びかけを行ったり、SNSを通じて告知をするなど様々な方法で宣伝を行いました。そうして集まった人たちが、「多文化とは何か」「自分にとってグローバルな言語とはなにか」などの問いをともに考えました。様々なエスニシティをもった人たちが集まったためか、各々のこれまでの多様な生き方が、対話を通じて、語られていったことが印象的でした。言葉の問題が心配であったのですが、複数言語を話せる人たちが通訳することで、日本語だけでなく、自分の話したい言語で対話することができました。このことは、日本語がうまく話せない留学生にとってセーフであったにちがいないと思います。

[写真2]2014年5月12日、大阪大学豊中キャンパスオレンジショップでの、第一回留学生p4cの様子。初回は、自己紹介をしながら、コミュニティーボールを作成した。

 そして、6月の最後の2回では、両者を一つの場に集めた合同セッションを実施しました。セーフなコミュニティを広げていくことを目標としたこのセッションでは、一回目で、KISに留学生たちを招き、2回目には、阪大にKISの学生たちを招き、p4cを行いました。KISの学生たちにとっては、留学生という異なる文化的背景をもつ人たちと対話を行うこと、阪大という身近にありながらも関わることのなかった場所で対話することが重要な意味を持ちました。留学生も同様に、近くても入ることがめったにない学校で対話すること、そして日本の中高生たちと対話することは、重要でした。近くにいながらも、関わることがなかった両者を結びつけられたことは、新しい関係性ができるきっかけになるはずだと思います。

 わたしたちのこのような活動は、決して独力で達成できたものではなく、多くの方々の協力があってはじめて成立しました。様々な形でご協力していただいた、KISの先生方や生徒たち、阪大生、一般の方々、ハワイ研修でも今回の活動でも大いに協力をしていただいた本間直樹先生、高橋綾さん、金和永さん、そして未来共生プログラムの関係者方々に心から感謝したいです。

 最後に、このような活動はわたし個人にとって、大きな学びの機会でした。企画から宣伝、実施、反省、フィードバックにいたるまでの一連の行程をグループで実施することは、実践的な社会活動の経験になりました。とくに、目の前の誰かとともに活動することのむずかしさは、文献研究を主とする普段の研究生活においては味わえない経験でした。

 

(2014年8月15日, 「のいるプロジェクト」班 村上)

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