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活動報告

神戸朝鮮高級学校美術部との交流会


[写真1]『ⅩⅧ』と神戸朝鮮高級学校3年生の呉世蘭(オ・セラン)さん

 3月16日(月)午後より神戸朝鮮高級学校美術部学生とその関係者11名が大阪大学 未来共生プログラムの研究棟を訪れ、プレゼンテーションならびに交流会を行いました。これは、神戸朝鮮高級学校3年生の呉世蘭(オ・セラン)さんが制作した『ⅩⅧ』という作品を当プログラムに常設展示物として寄贈していただいたことがきっかけで実現したものです。

 まず、訪問者の方がたには最初に豊中キャンパスを一周しながら大阪大学についてのレクチャーを受けていただき、未来共生プログラムのある文理融合型研究棟6階も見学していただきました。その後、会議室で、呉世蘭さんが「大阪大学x神戸朝高美術―私の“XⅧ”年間とこれから―」と題したプレゼンテーションを行いました。世蘭さんが、幼稚園から高校まで朝鮮学校に通い、中学までは美術とは縁のない生活を送っていましたが、在日朝鮮学生美術展覧会(学美展)との出会いで、高校から美術部に入ったことや、3年間で作成した作品へ込めた思いの紹介、芸大への進学が決まった中で、多種多様な表現者たちと出会い知識や技術を学ぶと予測されるが自分が現したいことより技術が先立たないようにしたいという思いなどを語りました。プレゼンの最後のパネルを以下に紹介します。


私は、育ってきた環境も、見てきた風景も、周りとは違います。
だからこそ、他にはない私だけの視点を大切にして、
私にしか成し得ないなにか。というものを
探し続けたいと思います。
「私」という軸がブレることなく、
且つ目は常に世界を視る。
という初心を忘れることなく、
これからも一人の表現者として、
自分が自分らしくいれる姿で生きていきたいと思います。

 

 世蘭さんのプレゼンの後、神戸朝鮮高級学校美術部の顧問でもあり学美展でも審査委員長をつとめられている朴一南(パク・イルナム)先生から朝鮮学校が子どもの表現活動をどう捉えているのかを学美展の入賞作品(小学校1年生から高校のクラブまで)を写真紹介しながら伝えてくださいました。学美展では、全ての朝鮮学校の全ての子どもたちが普段の図工や美術の時間につくった作品を集めて(1万数千点)、審査にあたる先生たちが一週間合宿をしながら子どもたちの作品を選ぶという作業をするそうです。その際に、決して“上手なもの”や“技術的に評価できるもの”ではなく、子どもがその子らしいのびのびとした表現や子どもの自由な発想があらわされているものを選ぶそうです。見せていただいた作品たちは、確かに、教えられ/指導されたものとはほど遠いユニークなもので、世蘭さんが表現活動をするようになった裏付けが学美との出会いであったことを納得させられるようなお話を聞くことができました。

[写真2]プレゼンテーションをされる呉世蘭さん

[写真3]プレゼンテーションをされる神戸朝鮮高級学校美術部・顧問の朴一南先生

 会場には世蘭さんのご両親や担任の先生、学美で審査員をされている北大阪朝鮮初中級学校の美術の先生も参加され、未来共生プログラムの学生や教職員との交流を深めることができました。会場からは「世蘭さんの情熱や伝えたい気持ちが原動力だと感じました」「自分の考えや作品制作に対する思いを言語かできている(若いのに…)ことに感心しました」「先生や親御さんが世蘭さんを好きであたたかく、その中で生まれる表現を見せていただきました」「子どもたちが自分を表現できるように支援するのが教育の大きな役割だと改めて思いました」「圧倒されました」などの感想が聞かれました。

 最後に世蘭さんの寄贈してくださった作品について説明をしておきます。3年次に作成した『ⅩⅧ』は今年度の学美展で金賞を受賞していますが、副題に「Since 1996.06.09 思考・錯誤・従順 私は6633という日を、こう生きた」とされています。世蘭さんが生まれた1996年6月9日から作品の制作が終わる6633日を自由迷走できる思考、様々な摩擦と混乱、従わなくてはいけないレールなどの模様の中にそれまで18年間の生きてきた道を振り返り、思い綴った言葉や文章をちりばめている作品です。文字は日本語とハングルで同じ言葉や文章が綴られ、ハングルの文字数が6633字となっているそうです。

 世蘭さんの作品と作品に書かれた文章は6階エレベーターホール前に常設展示されていますので是非ご覧ください。4月から芸大に進んだ後も、未来共生プログラムには時々顔を出してくれるようです。再会を楽しみにしています。

 

(2015年3月26日, 榎井)










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