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活動報告

「阪大生と共に考える、多様性を力にする社会〜ろうLGBT(性の多様性)の立場から〜」(プロジェクト・ラーニング 港区班)のご報告




当日のチラシ
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当日のチラシ
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 2期生のプロジェクト・ラーニングのご報告です。プロジェクト・ラーニングでは4つの班に分かれ、それぞれの班が実際にプロジェクトを企画・実行しています。

 2015年6月23日(火)「港区ダイバーシティ・ネットワーカー」班(以下、港区班;木場安莉沙さん[言語文化研究科]、西山梨佐さん[国際公共政策研究科]、謝振さん[法学研究科])が企画した「阪大生と共に考える、多様性を力にする社会〜ろうLGBT(性の多様性)の立場から〜」と題したセミナーが本プログラムと大阪市港区役所の主催で開催されました*。

*LGBTとは、レズビアン(Lesbian;女性として女性が好きな人)・ゲイ(Gay;男性として男性が好きな人)・バイセクシュアル(Bisexual;女性も男性も好きな人)・トランスジェンダー(Transgender;性別を変えて生きる人)の人々を意味する頭文字。

[写真1]手話表現をご説明なさる山本芙由美さん

 セミナーではDeaf-LGBT-Centerで活動していらっしゃる山本芙由美さんを講師としてお招きしご講演いただきました。テーマはろう、LGBTという二重マイノリティです。当日は60人ほどの方がいらっしゃり、会場が熱気を帯びるほどの賑わいでした。ろうの方々、その手話通訳の方々、盲ろうの方々、その盲ろう者通訳の方々、また、LGBT当事者の方々もいらっしゃっていました。

 山本さんは手話でお話されます。手話ができない我々は手話通訳の方を通じて、山本さんのお話をお伺いします。また、ろうの参加者の方は、発言なさるとき手話で話されます。盲ろうの方々には触手話通訳の方が山本さんのお話を通訳されています。セミナー会場のあらゆるところで、音声とは異なる方法による意思疎通が行われていました。

[写真2]セクシャリティの4つの軸の説明場面

 まず、山本さんは、LGBTの手話表現についてお話なさいました。レズビアンをどのように表現するのか、ゲイをどのように表現するのか、バイセクシャル、トランスジェンダーと、手話の表現の仕方をご説明下さいます。LGBTに対する侮蔑的な手話表現もあるとのことです。それらの表現は好ましくないことを教わりました。LGBTと呼ばれる人は、人口の7.6%ほどいる(2015年 電通総研)というデータも紹介されていました。15人に1人の人がLGBTであるということです。

 そして、参加者のセクシャリティについて問いかけられました。性別を「身体、心、外見・振る舞い、誰が好き」というように4つの軸で分けて考えたとします。完全なストレートの人ならば、たとえば、身体・心・外見・振る舞いは女性、誰が好きかは男性、となります。しかしながら、すべての人がそういった傾向があるのでしょうか。身体は女性でも男性的な振る舞いをする人、身体は男性でも女性的な服を好む人もいます。いろいろな人がいます。会場の人達も一緒になって考えました。よくよく考えてみると、みんなさまざまであることがわかります。山本さんは「それぞれの人が異なる顔を持つようにセクシャリティもそれぞれで異なります」とおっしゃっていました。

[写真3]会場でお話し下さる山本芙由美さん

 手話、LGBTのお話をされた後、ろうLGBTのお話に移りました。ろうの人たちの大変さ、LGBTの人たちの生きにくさ、何が大変なのでしょうか。どういう点がろう者である人、LGBTである人と異なるのでしょうか。山本さんのお話ではろうLGBTだからこその、特有の大変さがあると指摘されます。

 ろうLGBTの人たちの立場に立つと、ろうコミュニティではLGBTを理解する人が少ない、という難しさがあります。現在のところ、LGBTの人が社会のどこでも受け入れられる、というわけではありません。それと同様に、ろうコミュニティでもLGBTの人はいつも受け入れられるとは限りません。そのため、ろうコミュニティのなかでも、つねにLGBTであるがゆえの緊張感を強いられるのです。

 では、LGBTコミュニティではどうでしょうか。LGBTコミュニティではろう者と意思疎通できる人が少ないという難しさがあります。また、全ての手話通訳の方がLGBTの手話表現に馴染みがあるわけではなく、手話通訳の方にも専門知識が要求されます。手話を使いこなす人がたくさんいないように、LGBTコミュニティでも手話を話す人は限られます。

 このようなことから、ろうとLGBTという二重のマイノリティを抱えた人たちは、ろうコミュニティにも完全に打ち解けにくい、LGBTコミュニティにも入りにくい、というような問題に直面することになります。そのため、山本さんは、ろうLGBTをただ二重のマイノリティと捉えるのではなく、ろうLGBTを1つの存在と考え、ろうコミュニティ、LGBTコミュニティとも違った、ろうLGBTコミュニティこそがそれらの人達にとっては必要である、という旨を強調しておられました。

 セミナーの最後は手話の拍手で締めくくられました。セミナー会場にいらしていた方々も、非常に有意義な時間を過ごされたようでした。当日、会場にお越しくださった皆様、誠にありがとうございました。

 以下は港区班の謝振さんから、セミナーを企画していく中で学んだことについてのご報告です。

(2015年7月7日, 平尾)

チームワークの難しさ:セミナー企画という挑戦

 6月23日、私たち港区班の最も重要なセミナー、「阪大生と共に考える、多様性を力にする社会〜ろうLGBT(性の多様性)の立場から〜」が開催されました。このセミナーは企画から開催まで1ヶ月ほどかかりました。私はこのセミナーを港区班各自にとっての挑戦であると思いました。

 私たちの班は2014年度の「公共サービス・ラーニング」最終報告会の打ち上げ時に結成されました。「公共サービス・ラーニング」を大阪市港区役所で行っていた木場さんが呼びかけました。「この3月に港区でLGBTの情報発信に関するセミナーを開催させていただきました。『プロジェクト・ラーニング』ではLGBTを含めた、港区在住のマイノリティの方々を対象とした情報発信ネットワークの構築を模索する必要があるように考えています」。そのような思いが現在の活動につながりました。「公共サービス・ラーニング」で障がい者支援団体で活動させていただいていた西山さんにとっても、同様に市民公益活動に参加させていただいた私(謝)にとっても、この思いは共感を得るものでした。

[写真4]広報チラシの封詰めの様子

[写真5]当日の打ち合わせ

 私たちは3月のLGBTセミナーに参加した区民の方々にフィードバックをいただくため、2回の集まりを開きました。区民の方々のご意見によると、正確な情報の不足はLGBTへの関心と理解の欠如につながっている、とのことです。そのため、私たちはもう一度、区民の方々を対象として、LGBTに関するセミナー企画が有意義ではないか、と考えるようになりました。

 こうして、2回目の集まりの最後に、私たちはLGBTの当事者である山本芙由美さんをお招きし、区民の方々を対象としたセミナーを開くことを提案しました。当日参加してくださっていた区民の方々は、この考えに同意してくださったため、セミナーの開催を試みることとなりました。

 しかしながら、セミナーの開催は私たちの最初の予想よりも難しいものでした。

[写真6]セミナーで司会する港区班(左から西山梨佐さん、謝振さん、木場安莉沙さん)

 まず、難しさを感じたのは、山本さんに実際にお会いした打ち合わせの時でした。私たちは区民の方々と社会の多様性に関する情報を共有したいと思い、山本さんに連絡しお目にかかる機会を得ました。しかし、山本さんとの打ち合わせでは、必ず手話通訳の方が必要とされます。山本さんとの「話し合い」のその時において、私たちは初めて手話の重要性に気付きました。山本さんの立場に立って考えれば、手話通訳の方がいないとき、ろう者の方々がどのような苦労をされるのか、私たちはその難しさを感じました。

 つぎに、セミナーの企画はチームの連携に大きな課題を与えました。それは社会において「ホウ・レン・ソウ」(報告・連絡・相談)という私たち、学生にとっては馴染みのない、非常に重要な言葉でした。チームワークが必要な局面では、相互的かつ頻繁なコミュニケーションをとる必要があります。しかし、私たち学生は、セミナー企画においてメンバー同士の意思疎通が仕事を進める重要なカギであると言うことを知りませんでした。今回のセミナーを振り返ってみると、プレゼンテーションの内容をどのように工夫するか、広報チラシをどのようにデザインするか、また、印刷してできあがったチラシをどのように各団体にお届けするか、そういった様々な問題が出てきたため、1人だけでは克服できない、チームワークなしには成り立たない、と私たち全員が思いました。

 1つのイベントを成功させるには、スタッフ間の共同作業が必要とされます。特にスタッフにとって、事前に起こった問題、セミナー会場で起こる問題はその場で協力し合って解決していく必要があります。共同作業における意思疎通、これが今回のプロジェクト・ラーニングから得た私たちにとっての重要な学びでした。

 

(2015年7月2日, 謝)

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